太陽光パネルの寿命は何年か 3つの「年数」を分ける
環境省の資料では、パネルの寿命は約20〜30年程度です。よく聞く17年は、国税庁の質疑応答事例が示す減価償却の耐用年数で、寿命とは別の数字です。
環境省のリサイクルのガイドライン(第三版・令和6年)は、「太陽光パネルの寿命は約20~30年程度」と書いています。同じガイドラインは、使用済みのパネルの排出量が2030年代後半に顕著に増えると想定しつつ、その推移には様々な変動要因があり、不確実性があるとも書いています。
産業技術総合研究所(産総研)の報告によると、パネルの試験の規格はあっても、パネルの寿命に関する規格はありません。産総研が引く規格(JIS)の説明では、実際の期待寿命はパネルの設計、使用環境、運転の条件に影響を受けるとされています。
国税庁の17年は、会社員が自宅の太陽光で余った電気を、事業としてではなく売るときに、雑所得の必要経費に入れる減価償却費を計算するための年数です。パネルがその年数で使えなくなるという意味の数字ではありません。税金の計算の流れは太陽光の売電と税金で整理しています。
パネルはどう衰えるか 初期劣化・経年劣化・寿命
産総研によると、結晶シリコンのパネルは初期劣化、経年劣化の順に出力が下がり、最終的に寿命に至ります。湿気と熱による劣化は、一度始まると急に進むのが特徴です。
産総研は、パネルの一生の発電量(生涯発電量)が大切になるため、寿命の評価と予測が必要だとしています。そのうえで、湿気と熱による劣化は電極の腐食に起因することが多く、一度始まると急速に進みます。パネルの中でセルを包む封止材(EVA)から出る酢酸が、電極と基板の境目を腐食させる例が報告されています。
加速試験は、熱や湿気を強めて、屋外で長い年月をかけて起きる劣化を短い時間で再現する試験です。産総研は、寿命を数字で論じるには、劣化がはっきり表れるまで試験を続ける必要があるとしています。産総研が引く規格(JIS)の説明によると、規格の一連の試験の目的は、費用と時間の制約の中で可能な限り、パネルが屋外の気候に長時間さらされても耐えることを確かめることです。
産総研の報告によると、加速試験の結果から市場でのパネルの寿命を予測する技術が開発されています。予測には、2つ以上の強さの条件で試すことと、湿気と熱に紫外線などを重ねた複合の試験が要るとしています。実際の屋根の上では、いくつもの環境の負荷が同時にかかるためです。
1年でどれだけ出力が下がるか 産総研の試験
産総研が屋外に置いたパネルを定期的に外して室内で測った試験(2018年の報告)では、単結晶シリコンの劣化率は年0.50%、多結晶シリコンは年0.51%でした。測った高効率型の2種は、これより大きい値でした。
産総研の報告によると、この試験は屋外に置いたパネルを定期的に取り外し、ソーラーシミュレータ(人工の光源)を使って標準の条件で測ったものです。産総研は、2021年と2022年の報告で、高効率型のパネルの試験を佐賀県鳥栖市の九州センターで続けていると説明しています。
同じ報告は、高効率のシリコン系の劣化率は通常型の単結晶・多結晶より大きいとまとめています。ヘテロ接合型は電圧の低下で出力が下がり、バックコンタクト型は高い電位の位置に置いたものに出力が落ちる現象(PID)が出て、ばらつきが大きかったとしています。
同じ報告では、薄膜系のパネルは結晶シリコンと動きが違いました。アモルファスシリコンなどは光による劣化が概ね3年半で安定し、CIGSは1年間で初期値より1割程度上がり、CdTeは3年間で初期値より1割以上下がったとしています。
この数字は、限られた試料を数年にわたって室内で測った結果です。産総研自身も、劣化率の定義や、年間の発電量から求めた劣化率との関係を今後の課題に挙げています。
産総研の2022年の報告によると、PERC型の特性の変化は、パネルの温度が50℃以上になると起きる劣化(LETID)が夏に生じた可能性を示しています。同じ報告は、3月や11月にもパネルが50℃以上になる日があったとしています。
寿命より前に交換になる場合
環境省は、設計・施工の不具合や災害、故障、リプレイスで、一定の割合のパネルは寿命より前に排出されると見ています。日本電機工業会と太陽光発電協会の点検の指針は、割れや焦げ跡のあるパネルの交換を勧めています。
日本電機工業会と太陽光発電協会の保守点検ガイドラインは、パネルの焦げ跡、ひずみ、変色、はく離、ガラスの破損などの欠点がないかを検査するよう書いています。同じ指針は、近くのセルと明らかに違う重い変色があるパネルや、目に見える水分によるはく離があるパネルも、取扱説明書に従った交換を勧めています。
外されたパネルがすぐ捨てられるとは限りません。環境省のガイドラインによると、国内では使用済みのパネルが年間約4,400t排出され、そのうち約3,400tがリユースされていると推計されています。リユースの前には、外観、絶縁、出力、バイパスダイオード(影などで発電しない部分を迂回させる部品)などの検査をする例が示されています。
パネルとは別に、パネルの電気を家で使える形に変えるパワーコンディショナにも交換の時期があります。交換の費用と目安はパワコンの交換費用と寿命、火の出やすい箇所は太陽光の火災の記事で確かめられます。
長く使うために家で確かめること
太陽光発電協会は、月に一度前年の同じ月の発電量と比べること、設置後1年目とその後4年に1度の定期点検を勧めています。協会は、パネルは家電より長寿命でも性能が下がらないわけではないとしています。
太陽光発電協会によると、日常点検は、順調に発電しているかに加え、できる範囲で機器の外観の異常や異音・異臭がないかを確かめるものです。発電量を毎日グラフにすると、発電性能を確かめやすくなるとしています。協会は、メーカーによっては定期点検のメニューや費用を公表しているので参考にするよう案内しています。
点検が義務かどうかの整理は太陽光の点検の記事にまとめました。パネルの出力の保証の年数と条件は製品ごとに違うため、手元の保証書で確かめます。使い終えたパネルの扱いと新しい法律は太陽光パネルのリサイクル法、設置費用を何年で回収できるかは太陽光は何年で元が取れるかで整理しています。
よくある質問
- Q. 耐用年数の17年を過ぎたら、パネルを交換しないといけませんか
- 国税庁の質疑応答事例が示す17年は、会社員が自宅の太陽光で余った電気を売るときに、所得の計算の減価償却費に使う年数です。環境省の資料では、パネルの寿命は約20〜30年程度とされています。日本電機工業会と太陽光発電協会の保守点検ガイドラインは、ガラスの割れや焦げ跡などがあるパネルの交換を勧めています。
- Q. パネルが劣化しているかどうか、家で分かりますか
- 太陽光発電協会は、月に一度、前年の同じ月の発電量と比べることを勧めています。専門業者の定期点検は設置後1年目、その後は4年に1度が推奨されているとし、販売店・工務店・メーカーに相談するよう案内しています。
- Q. 寿命が来たパネルはどうなりますか
- 環境省のガイドライン(第三版・令和6年)によると、国内では使用済みのパネルが年間約4,400t排出され、約3,400tがリユースされていると推計されています。排出量は2030年代後半に顕著に増えると想定されています。家の太陽光にかかわるリサイクルの法律は、別の記事で整理しています。
この記事の用語
- パワーコンディショナ
- 太陽光パネルがつくる直流の電気を、家庭で使える交流に変換する機器。補助金の出力判定に使われることがある。 用語集で見る
出典
| 発行元 | ページ名 | 確認日 |
|---|---|---|
| 環境省 | 太陽光発電設備のリサイクル等の推進に向けたガイドライン(第三版・令和6年・PDF) | 2026年10月31日 |
| 国税庁 | 質疑応答事例「自宅に設置した太陽光発電設備による余剰電力の売却収入」 | 2026年10月31日 |
| 国立研究開発法人 産業技術総合研究所(産総研) | 結晶シリコン太陽電池モジュールの劣化と寿命予測技術(AIST 太陽光発電研究成果報告 2023・PDF) | 2026年10月31日 |
| 国立研究開発法人 産業技術総合研究所(産総研) | 屋外曝露された各種太陽電池モジュールの室内測定による劣化率の検討(AIST 太陽光発電研究成果報告 2018・PDF) | 2026年10月31日 |
| 国立研究開発法人 産業技術総合研究所(産総研) | 屋外曝露された高効率結晶Si系太陽電池モジュールの屋内測定結果の年次推移(II)(AIST 太陽光発電研究成果報告 2021・PDF) | 2026年10月31日 |
| 国立研究開発法人 産業技術総合研究所(産総研) | 屋外曝露された高効率結晶Si系太陽電池モジュールの屋内測定結果の年次推移(III)(AIST 太陽光発電研究成果報告 2022・PDF) | 2026年10月31日 |
| 一般社団法人日本電機工業会・一般社団法人太陽光発電協会 | 太陽光発電システム保守点検ガイドライン(2019年12月27日改訂・PDF) | 2026年10月31日 |
| 一般社団法人太陽光発電協会(JPEA) | 長く使っていただくために | 2026年10月31日 |
