回収年数は4つの数字で決まる
回収年数を動かすのは、設置費用・年間発電量・自家消費の割合・売電と買電の単価の4つです。この4つが分かれば、あとは割り算で年数が出ます。
「何年で元が取れるのか」という問いに、一つの数字で答えるのは無理があります。同じ5kWの設備でも、屋根の条件と家の電気の使い方で答えは数年ずれるからです。代わりに、年数を動かしている4つの数字に分けて見ていきます。
想定値25.5万円/kW。見積り次第で上下
設備利用率13.7%=年1,200kWh前後
想定は3割(余剰売電比率70.0%)
売る24円→8.3円/使う約30〜40円
①から③は調達価格等算定委員会が「令和8年度以降の調達価格等に関する意見」で示した想定値です。④の売電側は資源エネルギー庁が公表する調達価格、買電側は電力会社が公表する従量料金で、どれも公式資料で確認できます。
それぞれの数字が意味するもの
4つのうち、住んでいる人が後から動かせるのは主に③の自家消費の割合です。①②④は契約と屋根で決まってしまいます。
①の設置費用は令和8年度の想定値で1kWあたり25.5万円、5kWなら127.5万円です。これは制度の価格を決めるための平均的な前提で、実際の見積りはこれより安いことも高いこともあります。
②の年間発電量は設備利用率13.7%という想定から出ます。1年は8,760時間なので、1kWあたり年1,200kWh前後です。南向きで影のない屋根ならこれを上回り、北寄りの面や影のかかる屋根では下回ります。
③の自家消費は、発電した電気のうち家で使い切る分です。委員会の想定は余剰売電比率70.0%、つまり家で使うのは3割という前提になっています。昼間に人がいる家、エコキュートの昼間沸き上げ、EVの昼充電などで、この割合は上がります。
④の売る値段は、住宅用のFIT価格が運転開始から4年目まで24円/kWh、5〜10年目は8.3円/kWhです(2025年度下半期の価格。資源エネルギー庁の注記により2026年度にも同じ価格が適用されます)。買う値段はある大手の従量電灯Bで1段階目29円80銭、2段階目36円40銭、3段階目40円49銭です。
5kWの家で計算してみる
設置費用127.5万円、年間発電量6,000kWh、自家消費3割、買電単価35円という前提だと、回収はおおむね12年前後になります。
5kWの設備で、①25.5万円/kW、②1kWあたり年1,200kWh、③自家消費3割、④売電はFIT価格、買電は35円/kWh(従量電灯Bの2段階目付近)として計算します。運転維持費は想定値の3,000円/kW/年を引きます。
1年あたりの効果は、4年目までが「使う1,800kWh×35円」と「売る4,200kWh×24円」の合計から運転維持費1.5万円を引いて約14.9万円。5年目からは売電単価が8.3円に下がり、約8.3万円になります。
4年間で約59.5万円を回収し、残る68万円を年8.3万円ずつ回収すると約8.2年。合わせておよそ12年です。10年でFITが終わったあとも自家消費分の価値は残り、余った電気は小売電気事業者と個別に契約して売ることになります。
自家消費の割合が変わると年数はどう動くか
自家消費の割合が2割か7割かで、回収年数はおよそ14年と8年に分かれます。同じ設備、同じ費用でも6年の差が出ます。
4つの数字のうち、暮らし方で最も動くのが③です。そこだけを変えて、ほかの条件をそろえて計算し直すと、こうなります。
設置費用も同じくらい効きます。自家消費3割のまま、1kWあたりの費用だけを動かすと、年数はこう変わります。
つまり「何年」という数字は、前提を書かずに出しても意味を持ちません。年数を比べるときは、いくらの費用と何割の自家消費で計算したのかをそろえてから比べます。
この試算が当てはまらない家
屋根の向きと面積、影、昼間の在宅の有無で前提が崩れます。北面中心や影のかかる屋根では、発電量の想定そのものが成り立ちません。
発電量が2割減れば、回収年数はおおよそ2割以上伸びます。逆に在宅勤務、エコキュートの昼間沸き上げ、EVの昼充電がある家では自家消費が5割を超えることがあり、検針データや時間帯別の使用量の記録である程度は確かめられます。
パワーコンディショナ(直流を交流に変換する機器)の交換費用は、10年を超えたあたりから見込んでおく項目です。
判断する前に確認すること
見積りを比べる前に、自分の家の4つの数字を紙に書き出すことです。数字が埋まれば、提示された回収年数が妥当かどうかを自分で検算できます。
見落としやすいのが3番目です。提示された年数が短いときは、何割の自家消費で計算しているかを確かめてください。
4番目も同じです。住宅用のFIT価格は4年目までと5年目以降で3倍近い差があるため、初年度の売電収入を10年間そのまま伸ばした計算は実態から外れます。①の設置費用は、自治体の補助金を差し引いた後の金額で見ます。
よくある質問
- Q. 何年で元が取れると言い切れますか
- 言い切れません。この記事の年数は、国の委員会が示した想定値と現行の買取価格を使った試算です。実際の設置費用、屋根の向きや角度、住んでいる人の生活時間帯で結果は動きます。同じ設備でも数年の幅が出ます。
- Q. 蓄電池を足すと回収は早くなりますか
- 発電した電気を家で使う割合は上がるので、1kWhあたりの価値は上がります。ただし蓄電池そのものの費用が加わるため、太陽光だけの回収年数より短くなるとは限りません。蓄電池は災害時の備えや電気の使い方の自由度も含めて判断する項目です。
- Q. 11年目からはどうなりますか
- FITの買取期間は住宅用で10年です。11年目以降は小売電気事業者と個別に契約して売るか、自家消費に回すことになります。売電単価は下がりますが、パネル自体は動き続けるので、自家消費分の価値は残ります。
この記事の用語
- kW
- 発電設備の出力の大きさを表す単位。「4kWの太陽光」はこの値。パネル1枚は0.4〜0.5kW程度で、戸建てでは3〜6kWが多い。 用語集で見る
- kWh
- 電気の量を表す単位。蓄電池の容量(何kWhためられるか)や、1か月に使った電力量に使う。1kWの機器を1時間動かすと1kWh。 用語集で見る
- FIT
- 太陽光などでつくった電気を、国が決めた価格で一定期間(住宅用は10年)電力会社が買い取る仕組み。 用語集で見る
- 自家消費
- 発電した電気を売らずに自宅で使うこと。買う電気を減らせるので、売電単価より買電単価が高い今は有利になりやすい。 用語集で見る
- パワーコンディショナ
- 太陽光パネルがつくる直流の電気を、家庭で使える交流に変換する機器。補助金の出力判定に使われることがある。 用語集で見る
- 売電
- 発電した電気を電力会社などに売ること。単価は制度と時期で決まる。 用語集で見る
出典
| 発行元 | ページ名 | 確認日 |
|---|---|---|
| 資源エネルギー庁 | 買取価格・期間等|FIT・FIP制度 | 2026年9月7日 |
| 調達価格等算定委員会(経済産業省) | 令和8年度以降の調達価格等に関する意見(令和8年2月5日) | 2026年9月7日 |
| 東京電力エナジーパートナー | 料金単価表‐電灯 | 2026年9月7日 |
