「何年もつのか」の答え
メーカーが公表している充放電サイクル数は、京セラ「Enerezza Plus Ⅱ」が20,000サイクル、DMMエナジー「DMM.make smart ハイブリッド型」が12,000サイクル、住友電工「POWER DEPO V」が11,000サイクルです。1日1サイクルで使えば、計算上はいずれも30年を超えます。保証は15年・残存容量60%前後という設定が多く、国の製品登録基準の3,650回は補助金の対象になるための最低ラインです。
「蓄電池は10年で寿命」という言い方を見かけますが、メーカーの公表値はもっと大きな数字です。1日1サイクル(年365回)で割ると、20,000サイクルは約55年、12,000サイクルは約33年、11,000サイクルは約30年にあたります。テスラ「Powerwall」は太陽光の自家消費などの用途でサイクル無制限、オムロン「KPAC-Bシリーズ」は回数制限なしと公表しています。
では何年で考えればよいのか。目安になるのは容量保証です。京セラは15年でSOH(残存容量の割合)65%以上、住友電工は本体15年で容量50%まで、DMMエナジーは10年(無償)・15年(有償)で初期容量の60%を下回ったら交換、テスラは10年で70%維持としています。
「寿命が来る」の中身は、容量が減ることです
蓄電池はある日止まるのではなく、ためられる量が少しずつ減ります。しかも新品の時点で、使える量はカタログの容量より少なくなっています。
補助金の対象製品リストには、この初期実効容量が型番ごとに載っています。使ううちに減るのは、カタログの数字ではなくこちらの量です。10年目に6割という基準も、ここからの目減りを指しています。
減り方が効いてくるのは、非常時の備えより日々の自家消費(発電した電気を売らずに自分の家で使うこと)のほうです。夜の電気をまかなえていた家が、数年後には途中で買い足すようになります。設備は動いているので、故障としては気づかれません。
寿命を決める3つの条件
容量が減る速さは、充放電の回数、置き場所の温度、使い方の3つでほぼ決まります。どれも保証の条件に書かれている項目です。
条件1 サイクル数は「年数」に置き換えられる
1回の充放電を1サイクルと数えます。家庭用は1日1サイクルが目安で、公的な試験基準もこの換算です。
サイクルとは、空に近い状態から充電し、また使い切るまでを1回と数える単位です。この換算をメーカーの公表値に当てはめると、年数の桁が見えてきます。
図5の4社以外の主要メーカーは、近年カタログにサイクル数を載せなくなりました。ニチコンのように「サイクル寿命は公表しておりません」と製品Q&Aで明記する社もあります。ただ、編集部が施工会社に聞き取ったところ、メーカーの営業担当者の説明では「12,000サイクル前後」が現在の主流とのことでした。
背景には電池の種類の変化があります。DMMエナジーやファーウェイ(LUNA2000)が採用を公表しているリン酸鉄リチウムイオン電池(電池の材料にリン酸鉄を使う方式。従来の三元系より発熱しにくく、充放電の繰り返しに強いとされる)は住宅用の主力に広がっており、長州産業・ニチコン・カナディアンソーラーの現行機も同じ方式だと施工会社は説明しています。数字はあくまで営業説明であって保証値ではありませんが、「1万2千回=1日1回で約33年」という桁感は、公表している社の値と矛盾しません。
国の公募要領の表も同じ換算で、性能年数が1年伸びるごとに試験サイクル数が365回ずつ増えます。基準はどの年数でも容量60%以上で固定です。
この数字は「メーカーが公表しているサイクル寿命」ではありません。カタログに回数が載っていないことも、短命を意味しません。
年数の見方が変わる家もあります。昼に太陽光でためて夕方に使い、深夜の安い電力でまた充電して朝に使う家では年730サイクルに近づき、同じ回数に達する年数は単純計算で半分です。反対に非常用の備えで普段ほとんど充放電しない家では、サイクル数は年数のわりに増えません。
条件2と3 置き場所の温度と、使い方
リチウムイオン電池は高温ほど劣化が早まるため、各社とも使用周囲温度を仕様書に明記しています。運転モードを容量保証の条件にしている製品もあります。
西日が長く当たる外壁や風の抜けない狭い場所では、真夏の温度は仕様の上限に近づきます。保証規定には使用条件に違反した設置環境を免責とする条項があり、置き場所は保証に直結します。海に近い家では、塩害対応のタイプかを見積りの段階で確かめてください。
使い方のほうは、利用者が手で調整する必要はほとんどありません。放電の下限と上限は機器側で制限されており、使用者が指定できない領域は初期実効容量に含まないと公募要領にも書かれています。ただし容量保証を特定の運転モードに限る製品はあるので、特殊な使い方をする予定があれば保証規定を確認してください。
保証は、どこを見ればいいのか
見るのは3か所です。何年か、何を保証するのか(機器の故障か容量か)、容量が何%を下回ったら交換なのか。無償か有償かも確認してください。
「50〜60%」は、言い換えれば半分近くになるまで交換しないという約束でもあります。10年目に容量が7割へ落ちて夜の電気をまかなえなくなっても、基準を上回っていれば交換の対象にはなりません。
もうひとつ、保証の主体を確かめてください。公募要領が「販売店等による保証は含まない」と注記するとおり、メーカーの無償保証と販売店の上乗せ保証は別もので、販売店が廃業すれば後者は宙に浮きます。
買う前・買い替える前に確認すること
確認するのは、初期実効容量、保証の年数と容量基準、置き場所の温度条件、補助金の要件の4つです。カタログの一番大きな数字だけで比べると判断を誤ります。
価格の目安も持っておくと話が早くなります。国の公募要領には「2025年度目標価格(設備費+工事費・据付費、税抜)12.5万円/kWh(蓄電容量)」という数字があり、見積りが大きく離れていれば理由を聞く材料になります。
補助金との関係も押さえておいてください。国のDR家庭用蓄電池事業は1申請あたり上限60万円で、対象はSII(環境共創イニシアチブ。国の補助事業を実施する団体)に登録された製品に限られます。
よくある質問
- Q. 保証が切れたら蓄電池は使えなくなりますか
- 使えなくなるわけではありません。保証は「容量が基準を下回ったら無償で交換する」という約束で、基準は初期容量の50〜60%あたりに置かれています。保証が切れた後も容量が減った状態のまま動きますが、修理や交換は自己負担になります。
- Q. サイクル数は何回と考えておけばよいですか
- メーカーの公表値では、京セラ「Enerezza Plus Ⅱ」が20,000サイクル、DMMエナジー「DMM.make smart ハイブリッド型」が12,000サイクル、住友電工「POWER DEPO V」が11,000サイクル、SMART STARが6,000サイクルです。1日1サイクル(年365回)で割ると、順に約55年、約33年、約30年、約16年にあたります。ただし各社とも試験条件が同じではなく、京セラは「サイクル数を保証するものではありません」と明記しているため、実務上は容量保証(15年・残存60%前後)のほうを目安にしてください。
- Q. カタログの容量と、実際に使える容量は違いますか
- 違います。補助金の対象製品リストには、定格の蓄電容量とは別に「初期実効容量」が載っており、たとえば16.4kWhの製品で14.8kWhと表示されています。補助額や実際の使い勝手はこの初期実効容量で考えるほうが実態に近くなります。
この記事の用語
- kWh
- 電気の量を表す単位。蓄電池の容量(何kWhためられるか)や、1か月に使った電力量に使う。1kWの機器を1時間動かすと1kWh。 用語集で見る
- 初期実効容量
- 蓄電池が導入時点で実際に充放電に使える容量。カタログの定格容量より小さい。補助金の計算にこの値を使う自治体がある。 用語集で見る
- 自家消費
- 発電した電気を売らずに自宅で使うこと。買う電気を減らせるので、売電単価より買電単価が高い今は有利になりやすい。 用語集で見る
- SII
- 国の補助事業の執行を担う一般社団法人。補助対象になる蓄電池の登録製品リストを管理している。 用語集で見る
- DR
- 電力の需要と供給に合わせて、家庭の蓄電池などの充放電を調整する仕組み。国の蓄電池補助の参加条件になっていた。 用語集で見る
- 家庭用蓄電池
- 太陽光でつくった電気や夜間の安い電気をためて、必要なときに使う装置。停電時の備えにもなる。 用語集で見る
- サイクル数
- 蓄電池を「満充電→使い切る」で1回と数えた充放電の回数。寿命の目安になる。1日1回なら10年で約3,650回。 用語集で見る
