卒FITで変わるのは単価と契約先だけ
FITの10年が終わっても、パネルは動き続けます。変わるのは売電の単価と、誰と契約して売るかです。発電が止まるわけではありません。
卒FIT(固定価格での買取が10年で終わること)という言葉には、何かが終わる響きがあります。実際に終わるのは、国が決めた価格で買い取る約束の期間だけです。設備はそのまま動き、余った電気も出続けます。
変わるのは値段です。住宅用のFIT価格は、現在の制度で運転開始から4年目まで24円/kWh、5〜10年目が8.3円/kWhです。10年を過ぎるとこの保証がなくなり、小売電気事業者と個別に結ぶ契約の単価に切り替わります。
落差の本体は、卒FITの時点ではありません。4年目から5年目にかけて24円/kWhが8.3円/kWhに下がる段階で、すでに起きています。卒FITで動くのは、8.3円から8.5〜10.5円という狭い範囲です。
一方で、買う電気の値段は下がりません。従量電灯Bの電力量料金は29.80〜40.49円/kWhで、売る値段の3倍以上あります。この差の大きさが、次に見る3つの選択肢を分けます。
10年の起点は運転開始日です。設置工事の日でも契約の日でもなく、系統連系がすんで運転を始めた日から数えます。書類が手元にない場合は、契約中の電力会社に問い合わせれば確認できます。
3つの選択肢を並べる
取れる道は「そのまま売る」「自家消費に回す」「何もしない」の3つです。3つ目は放置ではなく、多くの場合は現在の買取事業者の単価に自動で移ることを意味します。
資源エネルギー庁は満了後の対応として、複数の買取事業者から選ぶこと、蓄電池や電気自動車と組み合わせて自家消費すること、例外的なケースとして一般送配電事業者による無償引き受けを挙げています。ここに「特に手続きをしない場合」を加えて3つに整理しました。
①のそのまま売る道は、小売電気事業者と個別に契約を結んで余剰電力を売る形です(相対契約)。確認できた大手事業者の公表単価は8.5円/kWhと10.5円/kWhでした。指定の販売店で対象の蓄電池を購入した人に半年間だけ23円/kWhとする条件付きのプランも、公式ページに載っています。
②の自家消費に回す道は、売らずに家で使い切る発想です。1kWh売って得るのは10円前後ですが、1kWh買わずに済ませれば30〜40円が浮きます。蓄電池、エコキュートなどの給湯機、V2H(電気自動車の電池から家に給電する設備)は、そのための道具です。
例外として挙げられている無償引き受けは、買取先が決まらないときに一般送配電事業者が電気を無償で引き受ける扱いです。収入にはなりませんが、発電した電気の行き場がなくなるわけではありません。
③の何もしない道も、選択肢として成立します。大手事業者の公式ページには、満了後も手続きなしで自社の定める単価で買い取りを続けると書かれています。逆に言えば、通知を読まずにいると、比較しないまま安い単価で売り続けることになります。
ためて使うと、お金の流れはどう変わるか
余剰電力を売ると1kWhあたり10円前後、ためて使うと30〜40円分の節約になります。5kWで余剰4,200kWhの家なら、年で数万円の差です。
数字で見ます。5kWの設備で年6,000kWh発電し、そのうち3割を家で直接使い、残りが余剰になる家を想定しました。
前提の数字は家ごとに違います。屋根の向きや家族の生活時間で余剰の量は変わるため、自分の家に当てはめるときは、検針票に載っている売電量に置き換えて読んでください。
この4,200kWhの行き先で、1年の金額がどれだけ変わるかを並べます。売る値段を9.5円/kWh、買う値段を35円/kWhとして計算しました。
余剰電力の価値は、行き先で3倍以上変わります。ただし③は成り立ちません。蓄電池には容量の上限があり、充放電では電気の一部が失われ、晴れた日の昼にあふれる分は結局売ることになります。
この図には機器の費用が入っていません。年間の差が数万円だとすると、機器の費用を何年で回収できるかという別の計算が必要になります。ここを飛ばした「ためたほうが得」という説明は、片側だけを見せています。
いつから、何件が対象になってきたか
住宅用の卒FITは2019年11月に始まりました。11月と12月の2か月だけで約53万件、2023年までの累積で約165万件・670万kWが満了する見込みと国は説明しています。
住宅用の余剰電力買取制度は2009年11月に始まり、その10年後にあたる2019年11月から満了を迎える設備が出始めました。制度としては新しい局面ですが、すでに7年近くが経っています。
最初の2か月で出た件数だけを見ても、卒FITは珍しい出来事ではありません。買取メニューも2019年6月までに大手電力会社から出そろっており、比較する材料はすでに公開されています。
満了が近づくと、契約中の電力会社から個別の通知が届きます。時期は満了の6〜4か月前が目安で、事業者によってはこれより早く届くこともあります。通知が来てから比較を始めても間に合う設計です。
判断する前に確認すること
まず自分の満了時期を確かめ、通知を待って比較することです。急がせる勧誘に応じる必要はありません。
3番目が土台になります。年に何kWh売っているかが分からないと、単価が1円違うことの意味も、蓄電池を入れたときの効果も計算できません。検針票や電力会社のウェブ明細で、まず自分の余剰電力量を確かめてください。
資源エネルギー庁は、卒FITをめぐる勧誘についても注意喚起を出しています。「0円買取となるため蓄電池を付けなければ損」「当社と契約しなければ損」「売電より自家消費が絶対に得」といった説明は、いずれも正確ではないとされています。現在の電力会社が必ず買取を終了するとも限りません。
説明に納得できないときの相談先も用意されています。資源エネルギー庁は買取期間の満了に関する相談窓口を設けており、電話番号と受付時間を公表しています。契約を急がせる連絡があったときは、その場で答えずに確認する時間を取ってください。
そのうえで、単価だけで決めない見方も要ります。単価の高いプランには、自社の電気契約とセットであることや、期間が限られていることなどの条件が付いていることがあります。条件を外したときにいくらになるかを、契約前に確認してください。
よくある質問
- Q. 何もしないと売電は止まりますか
- 止まるとは限りません。大手小売電気事業者の公式ページには、満了後も手続きなしで自社の定める単価で買い取りを続けると書かれています。ただし単価は下がるため、通知を確認せずに放置すると気づかないまま安い単価で売り続けることになります。
- Q. 蓄電池を入れないと0円で買い取られるのですか
- 資源エネルギー庁は「0円買取となるため蓄電池を付けなければ損」という説明を誤りとして注意喚起しています。買取先は複数から選べます。蓄電池は選択肢の一つで、必須ではありません。
- Q. 買取先はいつ決めればよいですか
- 買取期間満了の6〜4か月前に、契約中の電力会社から個別に通知が届きます。通知が届いてから比較を始めれば間に合います。急かす連絡があっても、その場で決める必要はありません。
この記事の用語
- kW
- 発電設備の出力の大きさを表す単位。「4kWの太陽光」はこの値。パネル1枚は0.4〜0.5kW程度で、戸建てでは3〜6kWが多い。 用語集で見る
- kWh
- 電気の量を表す単位。蓄電池の容量(何kWhためられるか)や、1か月に使った電力量に使う。1kWの機器を1時間動かすと1kWh。 用語集で見る
- FIT
- 太陽光などでつくった電気を、国が決めた価格で一定期間(住宅用は10年)電力会社が買い取る仕組み。 用語集で見る
- 卒FIT
- FITの買取期間(住宅用は10年)が終わること。またその状態の家庭。終わった後は売電単価が大きく下がる。 用語集で見る
- 自家消費
- 発電した電気を売らずに自宅で使うこと。買う電気を減らせるので、売電単価より買電単価が高い今は有利になりやすい。 用語集で見る
- 系統連系
- 発電設備や蓄電池を電力会社の送電網につなぐこと。つないで初めて売電や買電ができる。 用語集で見る
- V2H
- 電気自動車の電池から家に電気を送る設備(Vehicle to Home)。車を大きな蓄電池として使う考え方。 用語集で見る
- 売電
- 発電した電気を電力会社などに売ること。単価は制度と時期で決まる。 用語集で見る
出典
| 発行元 | ページ名 | 確認日 |
|---|---|---|
| 資源エネルギー庁 | 住宅用太陽光発電にせまるFIT買取期間の満了、その後どうする? | 2026年9月7日 |
| 資源エネルギー庁 | 買い取り期間満了をむかえるみなさま(ご注意ください) | 2026年9月7日 |
| 資源エネルギー庁 | 買取期間満了に関するスケジュール | 2026年9月7日 |
| 資源エネルギー庁 | 買取価格・期間等|FIT・FIP制度 | 2026年9月7日 |
| 東京電力エナジーパートナー | 再エネ買取標準プラン | 2026年9月7日 |
| 東京ガス | 卒FITを迎える方へ | 2026年9月7日 |
| 東京電力エナジーパートナー | 料金単価表‐電灯 | 2026年9月7日 |
