太陽光の設置義務化 東京都と川崎市で対象になる人・ならない人

義務を負うのは大手のハウスメーカーなどの事業者で、戸建てなどを建てる人・買う人や今住んでいる家は対象外です。建てる人・買う人は説明を聞いて判断し、川崎市は設置するかを選べるとしています。

太陽光パネルがある家とない家が並ぶ、架空の新築住宅地
太陽光パネルがある家とない家が並ぶ新築住宅地を表現したAI生成画像。住宅と周囲の街並みは架空です。※画像はイメージです。
目次
  1. 太陽光の設置義務化は、誰の義務か
  2. 東京都の制度で、事業者が負う5つの義務
  3. 川崎市の制度は、東京都と何が違うか
  4. 家を建てる人・買う人に起きること
  5. 国の決まりは、太陽光の設置を求めているか
  6. 今の家は対象外 「義務化」をうたう勧誘に注意

太陽光の設置義務化は、誰の義務か

東京都と川崎市の義務を負うのは、新築の建物をたくさん建てる大手のハウスメーカーなどです。戸建てなど延べ面積2,000㎡未満の家を建てる人・買う人や、今住んでいる人に、設置の義務はありません。

図1 義務を負う人・負わない人(2026年10月17日時点)
義務を負う
東京都都内の供給が年2万㎡以上の事業者
川崎市市内の供給が年5,000㎡以上の事業者
対象の建物2,000㎡未満の新築(戸建てを含む)
義務を負わない
家を建てる人説明を聞いて判断する
家を買う人説明を聞いて判断する
今住んでいる家対象外
東京都環境局「東京都建築物環境報告書制度の概要」・太陽光パネル設置に関するQ&A、川崎市「新たに川崎市に家を建てる方・購入する方」・同市のガイドライン(第1.1版)による。供給の量は、延べ面積2,000㎡未満の新築の建物の延べ面積を1年間で合計したもの。延べ面積2,000㎡以上の建物は別の制度で扱われ、川崎市では建築主に設置の義務がかかる。

戸建てなどに関係する「太陽光の義務化」は、東京都の建築物環境報告書制度と、川崎市の特定建築事業者太陽光発電設備導入制度です。どちらも2025年4月に始まり、新築の建物を多く建てる事業者に、太陽光パネルなどの設置を求めています。

東京都のQ&Aは、義務の対象を年間延べ2万㎡以上を建てる大手事業者とし、50社程度になる見込みだとしています。川崎市は、市内で1年間に5,000㎡以上を新築するハウスメーカーなどの建築事業者を対象にしています。

東京都の制度で、事業者が負う5つの義務

東京都は、対象の事業者に、断熱・省エネ性能の確保、太陽光などの設置、電気自動車の充電設備の整備、施主や購入者への説明、都への報告の5つを義務づけています。

図2 東京都が事業者に義務づける5つの事項
1断熱・省エネ断熱は建物ごと、省エネは都内平均の場合も
2太陽光など事業者単位で基準量を達成
3充電設備駐車区画があれば配管等を整備
4説明施主や購入者に契約までに
5報告翌年度の9月末までに都へ
東京都環境局「東京都建築物環境報告書制度の概要」・リーフレット(令和7年度基準)による。3の「配管等」は、将来の充電設備の設置が最小限の工事で済むよう、新築時に配管・配線を整えておくこと(戸建て住宅で駐車区画がある場合は1区画以上)。

太陽光の基準は、1棟ごとに2kWを載せるという意味ではありません。事業者が1年間に供給する建物の数から、事業者単位の「設置基準量」を計算し、その量以上を載せる仕組みです。

図3 東京都の設置基準量の計算(都のリーフレットの例)
設置可能棟数
供給棟数-除外できる棟数
500棟
×
算定基準率
区市町村別か、一律
85%
×
棟当たり基準量
計算のための係数
2kW
=
設置基準量
1年間の合計で達成
850kW
東京都環境局のリーフレット(令和7年度基準・令和9年度基準)の「基準への適合方法の例」(除外できる棟数が0の場合)。算定基準率は区市町村別の割合(30%・70%・85%)か、一律85%で計算する。リーフレットは、4kWを100棟・2kWを250棟に載せて合計900kWとする例と、5kWを200棟に載せて合計1,000kWとする例を、どちらも基準に適合するとして示している。
屋根に設置された太陽光パネル
屋根に設置された太陽光パネルの実際の設置例。

南向きなどの屋根で最も大きい面が20㎡未満で、2番目に大きい面があっても10㎡未満の建物などは、計算から除けます。都のQ&Aは、日当たりや屋根の形を踏まえて、どの建物に載せるかを事業者が判断するとしています。

川崎市の制度は、東京都と何が違うか

川崎市も事業者単位で基準量を達成する仕組みで、2kWの係数も同じです。主な違いは、対象になる供給の量が年5,000㎡以上と小さく、算定基準率が市内一律70%であることです。

図4 東京都と川崎市の制度の違い(2026年10月17日時点)
東京都
始まり2025年4月
対象の事業者年2万㎡以上
算定基準率30%・70%・85%か一律85%
棟当たり基準量2kW
報告翌年度の9月末まで
川崎市
始まり2025年4月
対象の事業者年5,000㎡以上
算定基準率市内一律70%
棟当たり基準量2kW
報告翌年度の9月末まで
東京都環境局のリーフレット・制度の概要、川崎市のガイドライン(第1.1版・令和7年11月)による。川崎市の設置基準量は「設置可能棟数×算定基準率×棟当たり基準量」で計算する。

川崎市は、太陽光を載せる代わりに、規則で定めた代替措置を取ることも認めています。市は事業者ごとの適合状況をホームページで公表し(初年度の令和7年度分は事業者名だけの公表とする試行)、基準に適合しない場合の罰則規定はないと説明しています。一方で、適合しない事業者などに勧告し、従わなければ氏名などを公表できる仕組みがあります。

東京都にも代替措置があります。都のQ&Aによると、事業者が過去に自社で供給した都内の既存住宅に新しく太陽光を載せた場合も、基準量の2割を上限に数えられます。

家を建てる人・買う人に起きること

東京都では、事業者が契約までに、断熱・省エネ性能や太陽光の容量などを書いた書面で説明します。家を建てる人・買う人は、その説明を聞いてプランや購入を判断します。

図5 注文住宅・建売住宅で説明を受ける流れ(東京都の例)
1相談・検討ハウスメーカーなどと
2書面で説明都の参考様式などを交付
3内容を確かめる断熱・省エネ・太陽光・充電設備
4契約説明はこれより前に受ける
東京都環境局「太陽光パネル設置に関するQ&A」のQ6-1・Q6-2と、その後に載っている参考資料による。説明書の参考様式には、断熱性能(UA値)、省エネ性能(BEI)、太陽光発電設備の設置容量、電気自動車の充電設備の整備状況などの欄がある。
住宅の性能や太陽光について、契約前に書面の説明を受ける手元
住宅の性能や太陽光について、契約前に書面で説明を受ける場面を表現したAI生成画像。書類は架空の説明資料です。※画像はイメージです。

都のQ&Aは、注文住宅の施主は事業者の説明や都の指針を踏まえて注文を判断し、建売住宅の購入者は説明を聞いて購入を判断する仕組みだとしています。施主は、環境への負荷を減らすよう努める立場を踏まえて注文を判断するとされています。

川崎市でも、施主や購入者はハウスメーカーや建築士の説明を聞き、設置するかしないかを選べます。市は、日照や立地によっては設置に適さない建物もあり、すべての新築に設置を求めるものではないとしています。

図6 新築の家を建てる人・買う人の立場(川崎市の説明)
注文住宅を建てる
説明する人建築士など
太陽光設置するか選べる
建売住宅を買う
変わること太陽光付きを選べる機会が増える
太陽光付いた家を選ぶか決める
川崎市のリーフレット「新築住宅等への太陽光パネルの設置制度が始まりました」(2025年7月発行)の「みんなのQ&A」による。川崎市には、建築士が建築主に太陽光の説明をする制度(制度3・令和6年度開始)もある。

国の決まりは、太陽光の設置を求めているか

国が義務づけたのは、2025年4月以降に着工する住宅などの省エネ基準への適合です。国土交通省は太陽光や蓄電池を「導入もご検討ください」と案内し、市町村が定めた区域では建築士が再エネ設備を説明します。

図7 国・東京都・川崎市の決まりの時系列
2024
国の再エネ促進区域の制度が施行(4月)
川崎市の建築士の説明制度も4月に開始
2025
国の省エネ基準の適合義務(4月)
東京都・川崎市の新築への設置義務も4月に開始
2027
東京都の令和9年度基準
断熱・省エネの基準を引き上げ
2030
国の省エネ基準の引き上げ(遅くとも)
ZEH水準の省エネ性能へ
国土交通省「省エネ基準引き上げへ。脱炭素化も。」「建築物再生可能エネルギー利用促進区域について」、東京都環境局「東京都建築物環境報告書制度の概要」・リーフレット(令和9年度基準)、川崎市のガイドライン(第1.1版)による。東京都は令和8年度・令和9年度から省エネ性能の基準と充電設備の基準を改正するとしている。

国の再エネ促進区域は、市町村が促進計画を作って区域を決める仕組みです。区域内で条例が定める建物の設計を受けた建築士は、設置できる再エネ設備の種類や規模、光熱費を減らす効果などを書面で建築主に説明します。建築主が説明は要らないと伝えた場合は、説明の義務はかかりません。

国土交通省は、省エネ基準を遅くとも2030年までにZEH(高い断熱性能と省エネ設備、太陽光発電などで、年間のエネルギー消費量を実質ゼロ以下にすることを目指す住宅)水準の省エネ性能へ引き上げる予定としています。そのうえで、太陽光パネルや蓄電池の導入の検討を呼びかけています。

今の家は対象外 「義務化」をうたう勧誘に注意

東京都も川崎市も、今住んでいる家は義務の対象外としています。川崎市は「義務化された」と言って契約を迫る訪問販売に注意するよう呼びかけています。

図8 東京都の太陽光の助成 新築と既存住宅の単価(2026年10月17日時点)
新築住宅(3.6kW以下)
12万円/kW
上限36万円
・
既存住宅(3.75kW以下)
15万円/kW
上限45万円
クール・ネット東京「令和8年度 家庭における太陽光発電導入促進事業」による(受付中)。3.6kWを超える新築住宅は10万円/kW、3.75kWを超える既存住宅は12万円/kW(いずれも50kW未満、助成対象経費の合計金額が上限)。

今の家に太陽光を載せるかどうかは、これまでどおり自分で決めることです。東京都の助成は、既存住宅の単価が新築より高く設定されています。区市町村の上乗せは東京都の補助金の記事、川崎市の補助は川崎市の記事で整理しています。

「義務になったので今すぐ」と急かされたら、その場で契約しないでください。確かめ方は訪問販売の記事にまとめています。初期費用をかけずに載せる方法はリースの記事、太陽光の基本は仕組みの記事で扱っています。

数字についての注記
※設置基準量の計算(○棟×○%×2kW)は、事業者ごとに1年間の合計で見るための数字です。1棟ごとに2kWを載せる義務ではありません。
※東京都の助成の単価は、2026年10月17日時点のクール・ネット東京の公表値です。受付状況や条件は変わることがあるため、申し込む前に公式ページで確かめてください。
※記事は都と市の制度の概要です。個々の建物が設置の対象になるかどうかは、建物の条件によって事業者が判断します。

よくある質問

Q. 東京都で新築の家を建てると、太陽光パネルを必ず載せなければなりませんか
東京都のQ&Aによると、義務を負うのはハウスメーカーなどの事業者で、事業者は1年間に供給する建物全体で基準を満たします。日当たりや屋根の大きさなどを踏まえてどの建物に載せるかを判断するため、すべての新築に載るわけではありません。
Q. 今住んでいる家にも太陽光パネルの設置が義務になりましたか
なっていません。東京都は新築のみが対象で既存の物件は対象外と説明しています。川崎市も、今住んでいる住宅に設置を義務づける制度ではないとし、「義務化された」と言って契約を迫る訪問販売に注意するよう呼びかけています。
Q. 事業者が基準を満たさなかったら、罰則はありますか
川崎市は、事業者ごとの適合状況を市のホームページで公表して脱炭素化へ誘導する制度で、基準に適合しない場合の罰則規定はないと説明しています。ただし市のガイドラインでは、基準に適合しない事業者などに市が勧告でき、勧告に従わなければ氏名などを公表できるとしています。東京都は、事業者に建築物環境報告書を都に提出する義務があるとしていますが、都の資料では罰則の記載は見当たりません。

この記事の用語

kW
発電設備の出力の大きさを表す単位。「4kWの太陽光」はこの値。パネル1枚は0.4〜0.5kW程度で、戸建てでは3〜6kWが多い。 用語集で見る

出典