太陽光シミュレーションの見方 発電量を動かす4つの条件

太陽光発電協会によると、発電量は地域の日射量がポイントで、屋根の向き・角度も影響します。NEDOのデータで東京の30度の面は南向き3.73、東・西向き3.11、北向き2.33(kWh/m²・日)です。

寄棟屋根の4つの面に太陽光パネルを載せた住宅を真上から見た様子
寄棟屋根の4つの面に分けて太陽光パネルを載せた住宅を、真上から見た様子(実際の設置例)。面ごとに向きが違うため、試算では面ごとの枚数と向きが前提になります。
目次
  1. 発電シミュレーションは「日射量×屋根の条件」の見込み
  2. 東京・横浜・さいたま・千葉の日射量は、地点ごとの差が小さい
  3. 屋根の向きで、受け取る日射量はここまで変わる
  4. 季節と年ごとの天候で、数字は上下する
  5. 日射量から発電量、そして金額へ
  6. 自分で試すときは、地点と屋根の面を決めてから
  7. 見積りのシミュレーションで確かめること

発電シミュレーションは「日射量×屋根の条件」の見込み

太陽光発電協会は、発電量は地域の日射量がポイントで、屋根の面積・形・方位・傾斜も影響すると説明しています。発電シミュレーションは、この2つから発電量と電気代の節約額を見込むものです。

図1 発電シミュレーションで数字が決まる順番
1地域の日射量住んでいる場所の日照
2屋根の条件向き・角度・形・影
3年間の発電量載せる量(kW)をもとに試算
4電気代・売電の試算経済性シミュレーション
太陽光発電協会「設置までの流れ①自己所有の場合」の計画・見積りの項目をもとに編集部が図にした。

太陽光発電協会は、設置までの流れの中で「発電量をシミュレーションする」段階を設けています。同協会によると、発電量は日射量がポイントで、住んでいる地域の日射量を調べたうえで、どのくらい発電し、電気代をどのくらい節約できるかを試算します。

屋根の側の条件も数字を動かします。同協会は、屋根の面積・形・方位・傾斜が発電量に影響し、周りの高い建物や樹木が光を遮らないかも見ておくよう説明しています。この記事では、国の研究機関の日射量データで、地域・向き・角度・季節の4つがどれだけ数字を変えるかを見ていきます。

東京・横浜・さいたま・千葉の日射量は、地点ごとの差が小さい

NEDOのデータベースで南向き30度の面を比べると、東京3.73、横浜とさいたま3.97、千葉3.91(kWh/m²・日)です。NEDOのデータでは、この4地点の地域の差より、屋根の向きの差の方が大きく出ます。

図2 南向き・傾き30度の面が受け取る日射量(年平均・kWh/m²・日)
東京東京都
3.73
水平面 3.32
横浜神奈川県
3.97
水平面 3.54
さいたま埼玉県
3.97
水平面 3.51
千葉千葉県
3.91
水平面 3.48
1平方メートルの面が1日に受け取る日射のエネルギーを、月ごとの平均から年平均にした値。「水平面」は、傾けずに水平に置いた面の値。出典:NEDO「年間月別日射量データベース(MONSOLA-11)」の各観測地点(統計期間1981〜2009年)。

NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)は、全国837地点の日射量を、向きと傾きごとに調べられるデータベースを公開しています。月別の値を収めた MONSOLA-11 は1981年から2009年の29年間の平均で、同機構は年間・月間の発電量の推定に使えると説明しています。

単位の kWh/m²・日 は、1平方メートルの面が1日に受け取る日射のエネルギーです。NEDOのデータでは、この4地点とも、水平に置くより南へ30度傾けた方が多く受け取ります。4地点の差は、次の図の向きによる差よりずっと小さく収まっています。

観測地点は、住んでいる市区と同じ名前とは限りません。NEDOのデータベースには1都3県だけでも、練馬・府中・八王子・所沢・越谷・船橋・海老名など多くの地点が入っているので、家に近い地点の値を選んで使います。

屋根の向きで、受け取る日射量はここまで変わる

NEDOのデータでは、東京で30度に傾けた面は南向き3.73、東・西向き3.11、北向き2.33(kWh/m²・日)です。同じ家でも、どの面に載せるかでシミュレーションの数字は大きく変わります。

図3 東京で30度に傾けた面の向き別の日射量(年平均・kWh/m²・日)
南向き
3.73
30度
東向き・西向き
3.11
30度
北向き
2.33
30度
棒の長さは南向きを100%とした割合。MONSOLA-11 は日射を南中時刻(太陽が真南に来る時刻)を中心に午前と午後で対称に配分しているため、東向きと西向きは同じ値になる。出典:NEDO「MONSOLA-11」東京の地点、「NEDO標準気象データベースの解説書」。

NEDOの解説書によると、このデータベースの方位は真南を0度とし、15度刻みで真北の180度まで収めています。日射を南中時刻を中心に午前と午後で対称に配分して計算しているため、東向きと西向きは同じ値になります。

NEDOのデータでは、東京の東・西向きの面は南向きより少なく、北向きはさらに少なくなります。寄棟屋根のように面が分かれる家では、試算が「どの面に何枚載せる前提か」で結果が変わります。見積りの試算を見るときは、面ごとの枚数と向きが書かれているかを確かめます。

図4 東京の南向きの面の傾きと日射量(年平均・kWh/m²・日)
3.32
0度
3.53
10度
3.67
20度
3.73
30度
3.71
40度
3.62
50度
0度は水平。東京の地点で、年間を通していちばん多く受け取る傾き(年間の最適傾斜角)は32.8度。出典:NEDO「MONSOLA-11」東京の地点。

傾きの差は、向きの差ほど大きくありません。東京の南向きの面では、20度から40度のあいだで年平均の値はほとんど変わらず、NEDOが示す年間の最適傾斜角は32.8度です。試算を見るときは、屋根の勾配を何度として計算しているかも確かめます。

季節と年ごとの天候で、数字は上下する

NEDOのデータでは、東京の南向き30度の面は春の平均が4.20ともっとも多く、秋は3.19です。さらに同じ地点でも年によって日射量は上下するため、シミュレーションは平均の見込みとして読みます。

図5 東京の南向き・30度の面の季節別の日射量(kWh/m²・日)
3.70
冬
4.20
春
3.84
夏
3.19
秋
冬は12〜2月、春は3〜5月、夏は6〜8月、秋は9〜11月の平均。月別では4月の4.36がもっとも多く、1月は3.79、6月は3.59。出典:NEDO「MONSOLA-11」東京の地点、「NEDO標準気象データベースの解説書」。

夏がいちばん多いとは限りません。NEDOのデータでは、東京の南向き30度の面で、1月の3.79が6月の3.59を上回ります。月ごとの値は、夏が多く冬が少ないという単純な形にはなっていません。

NEDOの解説書は、太陽電池の発電効率が気温の影響を受けるため、データベースに月平均の気温を加えたと説明しています。同じ日射量でも、暑い時期と涼しい時期で発電量が同じになるとは限りません。

図6 東京の水平面の日射量は年によって上下する(年平均・kWh/m²・日)
最も多かった年
3.74
最大
29年間の平均
3.32
平均
最も少なかった年
3.06
最小
1981〜2009年の29年間で、年平均の日射量が最も多かった年と少なかった年の値。出典:NEDO「MONSOLA-11」東京の地点、「NEDO標準気象データベースの解説書」。

NEDOの解説書によると、年平均の最大値・最小値は、29年間で年平均の日射量が最も多かった年と少なかった年の値です。シミュレーションが平均の値を使っている限り、実際の1年の発電量はその上にも下にもずれます。

日射量から発電量、そして金額へ

国の委員会は、住宅用太陽光の売電価格を決める計算で、設備利用率を13.7%と見込んでいます。1kWあたりにすると年約1,200kWhです。金額の試算には、さらに売電単価と家で使う割合が加わります。

図7 日射量から金額の試算までの3段階
①
日射量
地点・向き・傾きごとの値(NEDOのデータベース)
▼ 載せる量(kW)と機器の条件を掛ける
②
年間の発電量
1kWあたり年約1,200kWh(国の想定の設備利用率13.7%から計算)
▼ 家で使う分と売る分に分ける
③
金額の試算
10kW未満の売電は24円/kWh(〜4年)・8.3円/kWh(5〜10年)
②は、調達価格等算定委員会「令和8年度以降の調達価格等に関する意見」の住宅用(10kW未満)の想定値13.7%に、1年の8,760時間を掛けた編集部の計算(1kW×8,760時間×13.7%=約1,200kWh)。③の単価は資源エネルギー庁が公表する2025年度下半期〜2027年度の調達価格。

国の委員会は、住宅用太陽光の設備利用率(設備が1年中最大の出力で動いた場合に対する実際の発電の割合)を13.7%と見込んでいます。1年の8,760時間に掛けると、1kWあたり年約1,200kWhです。

同委員会は、実際の案件から集めた設備利用率の過去4年間の平均が14.2%で、この想定値と同じ水準だと確認しています。どちらも多くの案件をならした値で、自分の家の屋根の向きや角度、影の条件は入っていません。

金額の試算では、発電量を家で使う分と売る分に分けます。資源エネルギー庁の公表では、10kW未満の太陽光の売電単価は、2025年度下半期から2027年度の認定で最初の4年が24円、5〜10年目が8.3円です。家で使う割合と電気料金の単価で何年で元が取れるかを試した例は、太陽光は何年で元が取れるかの記事にまとめています。

自分で試すときは、地点と屋根の面を決めてから

太陽光発電協会は、地域の日射量を調べ、メーカーのホームページにある発電量シミュレーションで試すよう勧めています。今の電気の使い方も検針票で調べておきます。

図8 見積りの前に自分で確かめておく4つのこと
1近くの観測地点日射量を調べる
2屋根の面向き・勾配・広さと、影になるもの
3メーカーの試算発電量シミュレーションのページ
4今の電気毎月の料金と使用量(検針票)
太陽光発電協会「設置までの流れ①自己所有の場合」のチェックポイント1(計画)をもとに編集部が図にした。日射量は NEDO「日射に関するデータベース」でダウンロードして調べられる。

太陽光発電協会は、計画の段階で、屋根の面積・形・方位・傾斜を調べ、設計図面があれば用意しておくよう勧めています。NEDOのデータベースは、閲覧システムをダウンロードして使う形で公開されていて、地点と向き・傾きを選ぶと月別と年平均の値を表示できます。

同協会は、毎月の電気料金と使用量を調べておくことも挙げています。同協会は2023年4月に更新したページで、昼と夜で単価が違う「時間帯別電灯」に変えると、割高な昼の電気を太陽光でまかない、夜は割安な電気を買える場合があると説明しています。見積りの前にこの4つをそろえておくと、業者ごとの試算の前提の違いに気づきやすくなります。

見積りのシミュレーションで確かめること

太陽光発電協会は、現地調査にもとづく設計図面と経済性シミュレーション資料が出ているかを確かめ、複数の業者から見積りを取るよう勧めています。

図9 太陽光発電協会が挙げる商談・見積り・契約時の確認点(抜粋)
1現地調査しっかり調べてくれるか
2設計図面配置図・配線図が付いているか
3経済性シミュレーション資料が提出されているか
4断定の言葉「必ず●●●kWh発電します!」に注意
出典:太陽光発電協会「設置までの流れ①自己所有の場合」のチェックポイント2(設置決定)の「①販売業者との商談時のポイント」「② 見積もり・契約時のポイント」「③後悔しないために! トラブル回避を心掛けるコト」から、シミュレーションに関わる項目を編集部が抜き出した。

太陽光発電協会は、見積り・契約時のポイントとして、現地調査のうえで作った設計図面(配置図・配線図)が添付されているか、経済性シミュレーション資料が提出されているかを挙げています。同協会はまた、設置業者が日射量の予測、屋根の方位・形・屋根材をもとに見積りを作ると説明しています。

同協会は、「必ず●●●kWh発電します!」「売電で毎月●万円が確実に入ります!」といった言葉に注意するよう呼びかけ、約束や説明は書面で残すよう勧めています。試算を受け取ったら、使った日射量の地点、屋根の面ごとの向きと枚数、売電単価の前提が書かれているかを確かめます。訪問販売で試算を示されたときの注意点は、訪問販売の記事にまとめています。

数字についての注記
※本記事の日射量は、NEDOのデータベースの観測地点ごとの平均値(1981〜2009年)です。同じ地点でも年ごとの天候で上下します。
※1kWあたり年約1,200kWhは、国の委員会が想定する住宅用の設備利用率13.7%から編集部が計算した値で、個々の家の屋根の向き・角度・影は入っていません。
※売電単価は2026年9月29日時点で資源エネルギー庁が公表している調達価格です。記事の数字は、実際の発電量や金額を保証するものではありません。

よくある質問

Q. 発電シミュレーションの数字は保証ですか
保証ではありません。NEDOの日射量データベースは、長い期間の観測をもとにした平均の値で、年によって上下します。NEDOのデータでは、東京の水平面で、29年間の年平均が3.32に対し、最も多い年は3.74、最も少ない年は3.06(kWh/m²・日)でした。太陽光発電協会も「必ず●●●kWh発電します!」といった言葉に注意するよう呼びかけています。
Q. 東向きや西向きの屋根でも太陽光は載せられますか
載せられますが、南向きより受け取る日射量は少なくなります。NEDOのデータベースでは、東京で30度に傾けた面の年平均は、南向き3.73、東・西向き3.11、北向き2.33(kWh/m²・日)です。見積りの試算が、屋根のどの面にどれだけ載せる前提かを確かめてください。
Q. 自分の家の条件で試算するにはどうすればいいですか
太陽光発電協会は、地域の日射量を調べ、太陽電池モジュールのメーカーのホームページにある発電量シミュレーションを使ってみるよう勧めています。そのうえで現地調査を受け、設計図面と経済性シミュレーション資料をもらって比べる流れです。屋根の図面と電気の検針票を用意しておくと話が進みます。

この記事の用語

kW
発電設備の出力の大きさを表す単位。「4kWの太陽光」はこの値。パネル1枚は0.4〜0.5kW程度で、戸建てでは3〜6kWが多い。 用語集で見る
kWh
電気の量を表す単位。蓄電池の容量(何kWhためられるか)や、1か月に使った電力量に使う。1kWの機器を1時間動かすと1kWh。 用語集で見る
売電
発電した電気を電力会社などに売ること。単価は制度と時期で決まる。 用語集で見る

出典

発行元ページ名確認日
国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)日射に関するデータベース(年間月別日射量データベース MONSOLA-11)2026年9月29日
国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)NEDO標準気象データベースの解説書(PDF)2026年9月29日
一般社団法人 太陽光発電協会(JPEA)設置までの流れ①自己所有の場合2026年9月29日
経済産業省 調達価格等算定委員会令和8年度以降の調達価格等に関する意見(2026年2月5日)(PDF)2026年9月29日
資源エネルギー庁買取価格・期間等|FIT・FIP制度2026年9月29日