全固体電池が家庭用蓄電池を変えるか 5年先の見通し

各社が公表しているのは電気自動車向けの時期で、トヨタと出光興産が2027〜28年、日産が2028年度です。家庭用蓄電池への搭載時期を示した公式発表は2026年9月時点で確認できません。

住宅の外壁に据え付けられた家庭用蓄電池
現在の家庭用蓄電池は液体の電解質を使うリチウムイオン型。全固体電池の各社の公表時期は電気自動車向けに集中している。
目次
  1. 各社が公表している時期
  2. 今のリチウムイオン電池と何が違うか
  3. 家庭用に届くまでの順番
  4. 今、蓄電池を買う人はどう受け止めるか
  5. 今後の確認先

各社が公表している時期

公表されているのは電気自動車向けの時期です。トヨタと出光興産が2027〜28年、日産が2028年度、ホンダが2020年代後半としています。家庭用の時期を示した発表は確認できません。

図1 どこが、いつと言っているか(2026年9月7日時点)
トヨタ・出光興産
2027〜28年
電気自動車で実用化
日産自動車
2028年度
搭載車を市場投入
本田技研工業
2020年代後半
電動モデルに搭載
家庭用蓄電池
未公表
時期を示した発表なし
左の3つはいずれも電気自動車向けの目標年。出典は各社のニュースリリース。

4社の発表は、いずれも電気自動車を対象にしたものです。家庭用蓄電池をいつ全固体電池に切り替えるかを示した公式発表は、2026年9月7日時点で確認できませんでした。

全固体電池は、電池の中で電気を運ぶ電解質を液体から固体に置き換えたものです。各社が示しているのはこの電池を電気自動車に載せる時期で、家庭用蓄電池についての時期ではありません。

図2 これまでに出た発表の並び
2023/10/12
出光興産・トヨタが協業を公表
開発、量産実証、本格量産検討の3段階
2024/4/16
日産がパイロット生産ラインを公開
横浜工場
2024/9/6
経済産業省がトヨタの計画を認定
生産能力9GWh/年、2026年以降順次
2024/11/21
ホンダがパイロットラインを初公開
栃木県さくら市、約430億円
2026/1/29
出光興産が材料の量産装置に着手
千葉県市原市、2027年中の完工が目標
家庭用蓄電池を対象にした発表は、この並びに入っていない。

直近は出光興産の発表です。同社は2026年1月29日、千葉事業所(千葉県市原市)に固体電解質の大型パイロット装置を建設するとして立柱式を実施しました。生産能力は年間数百トンを見込み、2027年中の完工を目指すとしています。

日産自動車は2024年4月16日に横浜工場のパイロット生産ラインを公開しました。本田技研工業が2024年11月21日に初公開した栃木県さくら市のラインは、投資額が約430億円、延床面積が約27,400平方メートルで、2025年1月に稼働を開始するとされています。

出光興産とトヨタ自動車の協業は2023年10月12日の公表で、開発、パイロット装置による量産実証、本格量産の検討という3段階で進める内容です。2027〜28年という時期は、この3段階を経て電気自動車を実用化する目標として示されたものです。

今のリチウムイオン電池と何が違うか

違いは電解質です。液体を固体に置き換えることで、漏れる心配がなくなり、高い温度でも動作でき、材料が劣化しにくくなるとされています。

図3 電解質の違い
現行のリチウムイオン型
電解質液体(有機溶媒)
安全面可燃性があり、漏れへの配慮が要る
温度高温での動作に制約
家庭用市販済み
全固体電池
電解質固体(セパレーターを兼ねる)
安全面電解質が漏れ出す心配がない
温度高い温度でも動作可能
家庭用製品化時期の公表なし
特徴の記述はホンダの技術解説による。

家庭用蓄電池に使われている現行のリチウムイオン電池は、電気を運ぶ電解質が液体です。ホンダの技術解説では、この液体電解質は有機溶媒で可燃性があり、漏れ出すことへの配慮が要るとされています。全固体電池はこの部分を固体に置き換えたものです。

図4 固体にすると変わるとされる3点
副反応
起きにくい
化学的に安定で劣化しにくい
液漏れ
心配がない
電解質そのものが固体
高い温度
動作できる
セパレーターを兼ねる
3点ともホンダの技術解説による説明。家庭用製品での数値は公表されていない。

ホンダは、少ないスペースで高電圧・高容量にできるとも説明しています。ただしこれは技術としての説明で、家庭用蓄電池の製品にそのまま当てはまる数値が公表されているわけではありません。

課題も公表されています。NEDOは「次世代全固体蓄電池材料の評価・基盤技術開発」(2023年度〜2027年度、2026年度予算18.5億円)で、固体と固体が接する界面の解明を課題に挙げ、粒子の接触や劣化への対応を進めるとしています。同事業の第2期では、中型セルで450Wh/Lのエネルギー密度を実証することが目標です。

450Wh/Lは、同じ大きさの電池にどれだけ電気を詰められるかを表す値です。NEDOはこれを液系リチウムイオン電池に迫る水準としており、達成済みの実績ではなく、これから実証する目標として置いています。

家庭用に届くまでの順番

公表資料で見えている順番は、まず電気自動車、次に材料の量産です。定置用や家庭用は、どの発表にも時期が書かれていません。

図5 公表資料から読み取れる順番
1材料の研究開発NEDO事業は2027年度まで
2試作ラインで検証日産2024年、ホンダ2025年1月稼働
3材料の量産出光興産の装置は2027年中が目標
4電池の量産トヨタは9GWh/年、2026年以降順次
5電気自動車に搭載2027〜28年/2028年度/20年代後半
6定置用・家庭用時期を示した公式発表なし
1〜5は各社・NEDOの公表による予定。6は公表がないため、位置だけが読み取れる。

トヨタは2024年9月6日、経済産業省が蓄電池に係る供給確保計画を認定したと公表しました。全固体電池はその対象に含まれ、生産能力は年間9GWh、生産開始は2026年以降順次とされています。

パイロットラインは、量産の前に工程を確かめる試作の設備です。日産は2024年、ホンダは2025年1月に稼働を始めるとしており、そのまま製品の出荷を意味するものではありません。

図6 材料側で先に要る2つの工程
固体電解質の大型装置
2027年中
千葉県市原市・年間数百トン
原料の硫化リチウム装置
2027年6月
完工に向けて進捗
いずれも完工の目標時期(出光興産)。電池そのものより前に、材料を年単位で作る工程が並ぶ。

NEDOの研究開発事業が想定する用途も、電気自動車とプラグインハイブリッド車です。定置用や家庭用の蓄電池を対象に明記した記述は、本記事で確認した公式資料の範囲では見当たりませんでした。

材料の量産が先に並ぶのは、電池を作れる量が材料の供給量に縛られるためです。出光興産は固体電解質の生産能力を年間数百トンと見込んでおり、この工程が車載向けの量産計画の手前に置かれています。

今、蓄電池を買う人はどう受け止めるか

待つ期間を見積もる材料がありません。家庭用の製品も価格も公表されておらず、電気自動車向けの時期がそのまま家庭用に当てはまるとする発表もありません。

図7 分かっていることと、分かっていないこと
分かっている
2027〜28年
電気自動車向けの実用化目標(トヨタ・出光興産)
分かっていない
未公表
家庭用蓄電池としての時期・容量・価格
待つ期間の見積もりは、右が公表されてからになる。

判断の分かれ目は、待つ先に何があるかが分かっているかどうかです。2027〜28年は車載向けの実用化目標で、家庭用蓄電池としていつ、いくらで出るかを示した公式発表は、2026年9月7日時点で確認できません。

図8 補助制度は別の時間軸で動いた(2026年度)
2026/3/24
DR家庭用蓄電池事業の公募開始
1申請あたり上限60万円、12月10日までの予定
2026/5/29
交付申請額が予算に到達
予定より早く公募が終了
2026/9/7
受付は終了したまま
制度は年度ごとに組み直される
執行はSII(環境共創イニシアチブ)。全固体電池の開発時期とは別に動く。

補助制度は別の時間軸で動いています。国のDR家庭用蓄電池事業は2026年3月24日から12月10日までの公募予定でしたが、5月29日に交付申請額が予算に達して終了しました。待つ判断は、補助の受付状況とも重なります。

現行のリチウムイオン型は市販されていて、容量も価格も保証の条件も各社のカタログで確認できます。全固体電池の家庭用製品は、その比較の土俵にまだ乗っていません。

停電への備えや自家消費のために今すぐ蓄電池が要るのか、それとも数年先でも構わないのか。この点は各社の発表とは無関係に、家庭ごとの事情で決まります。全固体電池の発表は、現行のリチウムイオン型を今買う判断を止める材料にも、急がせる材料にもなっていません。

今後の確認先

家庭用の話が出るとすれば、蓄電池メーカーの公式発表です。研究開発の進み具合はNEDOの事業ページとニュースリリースで追えます。

図9 家庭用の発表が出たら、この4つを見る
容量
何kWh
今の製品と同じ単位で比べる
寿命
何年
想定される使用年数
価格
いくら
工事費を含めた総額
保証
条件
期間と対象の範囲
4項目とも、現行のリチウムイオン型の製品カタログで公表されている項目。

車載向けの進捗は、トヨタ、日産、ホンダ、出光興産の各社のニュースリリースで公表されます。国の研究開発の枠組みは、NEDOの事業ページとニュースリリースに掲載されます。経済産業省は蓄電池産業に関する戦略を公表していますが、本記事の確認時点では同省のページを開けなかったため、数値の引用は行っていません。

NEDOの「次世代全固体蓄電池材料の評価・基盤技術開発」は2027年度までの事業で、途中の成果は同機構のニュースリリースで公表されます。各社の車載向けの発表が定置用や家庭用に触れるかどうかも、あわせて見る点になります。

家庭用蓄電池としての製品化は、車載向けとは別の発表になります。図9の4項目が公表された時点で、今の製品と並べて比べられるようになります。

よくある質問

Q. 家庭用蓄電池はいつ全固体電池になりますか
2026年9月7日時点で、家庭用蓄電池への搭載時期を示した公式発表は確認できません。各社が公表しているのは電気自動車向けの時期で、トヨタと出光興産が2027〜28年、日産が2028年度、ホンダが2020年代後半としています。
Q. 今のリチウムイオン型の蓄電池を買っても大丈夫ですか
全固体電池の家庭用製品は時期も価格も公表されていないため、待つ期間を見積もる材料がありません。国のDR家庭用蓄電池事業は2026年5月29日に予算到達で公募が終了しており、補助を使う場合は制度の受付状況が判断の材料になります。
Q. 全固体電池は何が優れているのですか
ホンダの技術解説では、電解質が固体で化学的に安定しているため副反応が起きにくく材料が劣化しにくいこと、電解質が漏れ出す心配がないこと、固体電解質がセパレーターを兼ねるため高い温度でも動作できることが挙げられています。NEDOの事業では、中型セルで450Wh/Lの実証が目標に置かれています。

この記事の用語

自家消費
発電した電気を売らずに自宅で使うこと。買う電気を減らせるので、売電単価より買電単価が高い今は有利になりやすい。 用語集で見る
DR
電力の需要と供給に合わせて、家庭の蓄電池などの充放電を調整する仕組み。国の蓄電池補助の参加条件になっていた。 用語集で見る
家庭用蓄電池
太陽光でつくった電気や夜間の安い電気をためて、必要なときに使う装置。停電時の備えにもなる。 用語集で見る
全固体電池
電池の中の液体を固体に置き換えた次世代の電池。発火しにくく長持ちすると期待され、まず電気自動車向けから実用化が進む。 用語集で見る

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