ペロブスカイト太陽電池はいつ家庭に 20GW目標と実用化の現在地

国の目標は2040年に約20GW。量産ラインの稼働は2027年、公表されている用途は工場や体育館の屋根と建物壁面です。戸建て向け製品の時期は公式には示されていません。

空を映す太陽光パネルの表面
現在の住宅用太陽光はシリコン型が主流。ペロブスカイト型は耐荷重の低い屋根や壁面への設置が想定されている。
目次
  1. 2026年に発表されたこと
  2. 今のシリコン型と何が違うか
  3. 家庭に届くまでに何が要るか
  4. 今、太陽光を検討している人はどう受け止めるか
  5. 今後の確認先

2026年に発表されたこと

NEDOは2026年2月6日にタンデム型の量産技術実証事業を開始し、3月18日にフレキシブル太陽電池の設計・施工ガイドラインを公開しました。いずれも住宅向け製品の発売ではありません。

図1 発明から量産までの公表済みの流れ(2026年9月7日時点)
2009年
桐蔭横浜大学の宮坂力教授が提案
JSTの事業成果ページに記載
2025/9/10
NEDOが実証事業3件を採択
支援規模378億円。2030年度までに200〜300MW以上の量産
2026/2/5
積水ソーラーフィルムが進捗を報告
内閣官房の会議に提出。旧シャープ堺工場に900億円
2026/2/6
NEDOがタンデム型の量産技術実証を開始
上限153.3億円。効率30%以上、住宅用12円/kWh以下が目標
2026/3/18
NEDOが設計・施工ガイドラインを公開
建物設置型が中心
2027/4
100MWの製造ライン稼働予定
積水ソーラーフィルムの資料による予定
いずれも公表資料に記載された日付。住宅向け製品の発売日を示した発表は含まれていない。

NEDOが2026年2月6日に開始したのは、グリーンイノベーション基金事業の「次世代型タンデム太陽電池量産技術実証事業」です。事業期間は2025年度から2030年度、支援額の上限は153.3億円。採択されたのは、2030年度までに500MW以上の量産化構想を持つ2社です。

タンデム型とは、ペロブスカイトの層と別の材料の層を重ねて、より多くの光を電気に変える方式を指します。この事業には、次の3つの目標値が置かれています。

図2 タンデム型量産技術実証事業に置かれた3つの目標
変換効率
30%以上
現状は14.8%
住宅用の発電コスト
12円/kWh以下
住宅用という言葉が入る
2030年度までの量産規模
500MW以上
採択は2社
NEDOの2026年2月6日の発表による目標値。達成された数字ではない。

NEDOは2025年9月10日にも、次世代型太陽電池実証事業として3件を新規採択しています。支援規模は378億円で、いずれも2030年度までに年200〜300MW以上の量産を掲げた計画です。

2026年3月18日のガイドラインは、主に建物設置型を対象に、構造と電気安全の要求事項をまとめたものです。NEDOはこれについて、従来は設置が難しかった耐荷重の小さい屋根や建物壁面などへの普及が期待されている、としています。

量産技術実証事業も設計・施工ガイドラインも、製品を売り出す段階の発表ではありません。工場の量産ラインをどう組むか、建物にどう取り付けるかを固めるための事業と文書です。

今のシリコン型と何が違うか

薄い膜でつくるため軽く、曲げられます。公表されている製品の重さは1平方メートルあたり4.5kg。一方で変換効率は現状14.8%で、シリコン系より低い水準です。

図3 公表されているフィルム型パネル1製品の値(2026年2月5日資料)
1枚の重さ
6.4kg
金属屋根用
面積あたり
4.5kg/㎡
軽さが特徴
最大出力
110W
1枚あたり
変換効率
14.8
30cm幅・18%を目標
積水ソーラーフィルムが内閣官房の会議に提出した資料の値。他社・他製品の値ではない。

重さと効率の数字は、内閣官房のGX専門家ワーキンググループに2026年2月5日に提出された積水ソーラーフィルムの資料に出ています。金属屋根用パネル1枚の重量は6.4kg、面積あたりでは4.5kg/㎡です。

ペロブスカイト太陽電池は、JSTの事業成果ページによれば、桐蔭横浜大学の宮坂力教授が2009年に最初に提案した方式です。同じページは、シリコン系太陽電池が変換効率25%を達成したとしています。

変換効率14.8%は30cm幅での値で、18%レベルが目標として置かれています。シリコン系の25%と並ぶ数字は、現時点では公表されていません。

軽さは、置ける場所の広さにつながります。NEDOがガイドラインの狙いとして挙げているのも、これまで重さの制約で設置できなかった屋根や壁面です。

図4 フィルム型ペロブスカイトとシリコン型(公表資料の数字のみ)
フィルム型ペロブスカイト
重さ4.5kg/㎡(6.4kg/枚)
変換効率現状14.8%→18%を目標
耐久性屋外20年相当が目標
想定用途体育館・工場の屋根、ビル外壁
量産2027年4月に100MW稼働予定
シリコン型(現在の住宅用)
重さ公式資料で確認できず
変換効率25%を達成(JST)
耐久性発電コスト試算の稼働年数は25年
想定用途戸建ての屋根が中心
量産市販済み
ペロブスカイト側は積水ソーラーフィルムの1製品の値。シリコン側はJSTと資源エネルギー庁の資料による。

耐久性は目標の段階です。同じ資料は屋外20年相当を目標として掲げています。すでに達成された実績値ではないため、住宅の屋根に20年載せた場合の性能は、現時点の公表資料からは読み取れません。屋外20年相当という目標が実績に変わるかどうかが、住宅の屋根に載せられるかを分ける材料になります。

家庭に届くまでに何が要るか

量産ラインの稼働、耐久性の実証、施工の基準、そしてコストの低下です。公表されている年次は2027年から2030年に集中しています。

図5 家庭の屋根に届くまでに要ること
1量産ラインの稼働2027年4月に100MWの予定
2耐久性の実証屋外20年相当は目標値
3設計・施工の基準2026年3月18日に公開
4コストの低下2030年に14円/kWh
5住宅向け製品の発売時期の公式発表なし
1〜4は公表済みの計画・目標。5は現時点で公表されていない。

量産の第一段階は2027年4月です。積水ソーラーフィルムの資料によると、旧シャープ堺工場(大阪市)に総額900億円を投じて100MWの製造ラインを立ち上げ、2030年までに段階的な追加投資でGW級を目指すとしています。

NEDOの実証事業に採択された3社も、2030年度までに年200〜300MW以上の量産を掲げています。稼働の予定年が並ぶのは2027年から2030年です。

図6 次世代型太陽電池の発電コスト目標(円/kWh)
20
2025年
14
2030年
12
住宅用
タンデム目標
10
2040年
(10〜14円)
2025・2030・2040年は資源エネルギー庁資料の目標。住宅用12円/kWh以下はNEDOのタンデム量産技術実証事業の目標値。

コストの目標は資源エネルギー庁の資料に段階で示されています。2025年に20円/kWhが可能となる技術の確立、2030年に14円/kWh、2040年に10〜14円/kWh以下です。同庁の発電コスト検証では、住宅用太陽光(設備容量5kW・稼働年数25年)の2023年の試算値が14.5円/kWh(政策経費あり)とされています。

施工の面では、2026年3月18日のガイドラインが最初の共通の物差しになります。耐荷重の低い屋根や建物壁面への設置を進めるための土台という位置づけです。

今、太陽光を検討している人はどう受け止めるか

公表されている当面の用途は、体育館や工場の屋根、学校・病院・役所、ビルやマンションの外壁です。戸建て向けの製品と価格は公表されていません。

図7 公表されている用途ターゲット(2026年2月5日資料)
体育館の屋根
学校・病院・役所
工場の屋根
ビル・マンション外壁
防水シート一体型
戸建て住宅挙がっていない
積水ソーラーフィルムが内閣官房の会議に提出した資料に挙がっている用途。

積水ソーラーフィルムが挙げている用途ターゲットに、戸建て住宅は入っていません。2027年に量産が始まっても、その最初の出荷先が個人の家であるとは公表資料からは読めません。

用途ターゲットは、面積が大きく、耐荷重に余裕のない建物に寄っています。個人の家の屋根は、この並びには出てきません。

図8 2040年の導入目標
国全体
約20GW
資源エネルギー庁(2026年4月時点)
のうち
東京都
約2GW
2035年は約1GWを目標
いずれも導入量の目標であり、住宅向けの内訳は示されていない。

国の導入目標は2040年に約20GWです。資源エネルギー庁の2026年4月の資料は支援として、令和8年度に総額70億円の予算計上を予定していることと、固定資産税の課税標準を1/2とする軽減措置を挙げています。

都道府県では東京都が数字を出しています。同資料によれば、2035年に約1GW、2040年に約2GWという目標です。

現在の住宅用太陽光との比較材料は、発電コストの試算です。住宅用太陽光の2023年の試算値は14.5円/kWh(政策経費あり)、2040年の基本ケースは10.1円/kWhとされています。ペロブスカイト側の2030年の目標14円/kWhは、シリコン型がすでに置かれている水準に並ぶ目標です。

今後の確認先

量産と製品の情報はNEDOのニュースリリースと資源エネルギー庁の資料で更新されます。住宅向けの話は、メーカーの公式発表を直接見るのが確実です。

図9 次に何を見るか
NEDO
ニュースリリース。実証事業の採択とガイドライン
資源エネルギー庁
国の導入目標と支援制度、官民協議会の資料
公開の会議資料
内閣官房のGX専門家ワーキンググループなど
メーカーの発表
住宅向けの価格と保証が示されるとすればここ
本記事の数字はいずれもこの並びの公表資料による。

NEDOのニュースリリースには、実証事業の採択やガイドラインの公開が掲載されます。日付と数字が入った一次情報は、まずここに出ます。

住宅向けの製品が出るとすれば、価格と保証の条件が示されるのはメーカーの発表です。国の目標と支援制度は資源エネルギー庁のページと、次世代型太陽電池の導入拡大及び産業競争力強化に向けた官民協議会の資料で確認できます。

編集部は本記事の作成にあたり、住宅用ペロブスカイト太陽電池の販売時期・価格を示す公式発表を確認できませんでした。次に確認するのは、2027年の量産ライン稼働に合わせた各社の発表になります。

よくある質問

Q. 戸建て住宅にペロブスカイト太陽電池を載せられますか
2026年9月7日時点で、戸建て向け製品の発売時期を示した公式発表は確認できません。内閣官房の会議に提出された積水ソーラーフィルムの資料が挙げている用途は、体育館や工場の屋根、学校・病院・役所、ビルやマンションの外壁です。
Q. シリコン型の設置を待ったほうがよいですか
国の導入目標は2040年で約20GW、量産ラインの稼働予定は2027年です。住宅向けに何がいくらで出るかは公表されていないため、待つ期間と得られるものを比べる材料が現時点ではそろいません。資源エネルギー庁の試算では、住宅用太陽光の発電コストは2023年で14.5円/kWh(政策経費あり)です。
Q. 変換効率はシリコン型より高いのですか
現時点では高くありません。積水ソーラーフィルムの資料では現状14.8%(30cm幅)で、18%レベルを目指すとしています。JSTの資料はシリコン系が25%を達成したとしており、NEDOのタンデム型実証事業は30%以上を目標に置いています。

この記事の用語

kW
発電設備の出力の大きさを表す単位。「4kWの太陽光」はこの値。パネル1枚は0.4〜0.5kW程度で、戸建てでは3〜6kWが多い。 用語集で見る
kWh
電気の量を表す単位。蓄電池の容量(何kWhためられるか)や、1か月に使った電力量に使う。1kWの機器を1時間動かすと1kWh。 用語集で見る
ペロブスカイト太陽電池
薄く軽く、曲げられる新しい型の太陽電池。日本の大学で発明され、国が量産を後押ししている。住宅向けの市販はこれから。 用語集で見る
変換効率
太陽の光のエネルギーのうち、電気に変えられる割合。数字が大きいほど同じ面積で多く発電する。 用語集で見る

出典