神奈川県の太陽光・蓄電池補助金 県と市町村で何が違うか

神奈川県の補助は国・県・市町村の3層。県は太陽光と蓄電池の同時導入が条件で、先着順のため数日で終わります。市町村は制度の有無も金額も自治体ごとに違います。

上空から見た瓦屋根と屋上に設置した太陽光パネル
瓦屋根と屋上バルコニーに設置した太陽光パネル。県の補助は太陽光と蓄電池の同時導入が条件になる(編集部取材の設置例)。
目次
  1. 神奈川県で使える制度の全体像
  2. 国の制度でもらえるもの
  3. 神奈川県の制度でもらえるもの
  4. 市町村の制度でもらえるもの
  5. 併用できる組み合わせ・できない組み合わせ
  6. 申請の順番と、間に合わなくなりやすい点

神奈川県で使える制度の全体像

使える制度は「国」「神奈川県」「お住まいの市町村」の3層に分かれます。3つとも別々に申請するもので、自動的にまとめて付くことはありません。

太陽光と蓄電池の補助金は、出どころが3つあります。国、神奈川県、そして市町村です。それぞれ窓口も締切も条件も別で、住んでいる市によって受け取れる合計額は数万円から数十万円まで開きます。同じ設備、同じ工事でも差が出ます。

図1 神奈川県で使える補助金の3層構造(2026年9月8日時点)
DR家庭用蓄電池事業2026年5月29日に終了
上限60万円/申請。太陽光単体への国の直接補助は現在なし
▼ 別々に申請
神奈川県
住宅用太陽光発電・蓄電池導入費補助金第2期 9/7 受付開始→同日 予算到達で締切
太陽光 7万円/kW + 蓄電池 15万円/台。同時導入が必須
▼ 別々に申請
市町村
横浜市 YGrEP(ポイント還元)/川崎市 たいせつ補助金(現金)/相模原市・平塚市ほか。制度がない市町もある
3つは窓口も締切も別。合計額は市町村によって数万円〜数十万円の差が出る。

国の制度でもらえるもの

戸建ての太陽光そのものに対する国の直接補助は現在ありません。蓄電池向けのDR事業は2026年5月29日に終了しています。

国の家庭用蓄電池補助は「DR家庭用蓄電池事業」でした。DRとは、電力の需要に応じて蓄電池の充放電を調整する仕組みに参加することです。執行はSII(環境共創イニシアチブ。国の補助事業を実施する団体)で、1申請あたりの上限は60万円でした。

この事業は終了しています。公式サイトには「2026年5月29日(金)に交付申請額の合計額が予算に達したことを確認したため、公募は終了しました」とあります。当初の締切は12月10日でしたが、5月末で枠がなくなりました。既築の戸建てに太陽光だけを載せる場合、国から直接もらえるものは現在ありません。

V2H(電気自動車の電池から家に給電する設備)にも国の補助枠がありますが、令和7年度補正分の受付状況はこの記事の確認時点で公式ページから読み取れませんでした。導入を検討する場合は、次世代自動車振興センターの応募要領を直接確認してください。

神奈川県の制度でもらえるもの

太陽光7万円/kW、蓄電池15万円/台。ただし太陽光と蓄電池の同時導入が条件で、先着約500件。第2期は2026年9月7日朝に受付が始まり、その日のうちに予算に達して締め切られました。

県の制度は「令和8年度神奈川県住宅用太陽光発電・蓄電池導入費補助金」です。太陽光は発電出力1kWあたり7万円、蓄電池は1台あたり15万円で、蓄電池はユニットの数ではなくパッケージの型番ごとに1台と数えます。太陽光は1kW以上10kW未満が対象で、増設の場合は増設後の合計で判定します。

図2 県の補助額の計算例(太陽光5kW+蓄電池1台の場合)
太陽光 5kW
7万円 × 5kW
35万円
蓄電池 1台
15万円 × 1台
15万円
県の補助
合計
50万円
補助対象経費(設備費・設置工事費)を超えない範囲。太陽光か蓄電池のどちらか単体では対象外。

条件は2つです。ひとつは太陽光と蓄電池を併せて導入することで、どちらか単体では対象外になります。もうひとつは交付決定(補助金を出すという行政の正式な決定)の前に工事を始めないことです。県の公式ページには「交付決定の前に事業に着手した場合は補助金を交付できません。審査に2〜3か月程度かかることがあります」とあります。

受付は先着です。第1期は2026年5月11日から12日の実質2日で予算に到達して終わりました。第2期は9月7日8時30分に電子申請が開き、受付可能件数は500件程度、締切は9月30日の予定でしたが、県の公式ページには同日付で「申請額が予算額に達したため、申請を締め切りました」と掲示されています。つまり受付開始から1日ももたずに終わりました。2026年度の県の補助は、追加の期が発表されない限りこれで終了です。

国や市町村の補助との併用は可能です。ただし県は「補助金の種類により、県との併用を認めていない場合があります」としており、併用できるかどうかは相手側の制度が決めます。

市町村の制度でもらえるもの

横浜市はポイント還元、川崎市は現金。金額の桁も申請の順番も違います。制度そのものがない市町もあります。

図3 横浜市と川崎市の違い
横浜市 YGrEP
もらえる形ポイント等の還元
太陽光15,000円分/kW(上限4kW=6万円分)
蓄電池12万円分/件
受付6/15〜12/25・先着
順番設置前に申請が必須
川崎市 たいせつ補助金
もらえる形現金
太陽光7万円/kW・上限28万円(FITなし)
蓄電池10万円/kWh・上限70万円(FITなし)
受付4/24〜12/28・執行率36%(9/2)
順番交付決定の後に着工
川崎市はFITを使うかどうかで金額が変わる(FITありは太陽光4万円定額・蓄電池上限30万円)。

横浜市:YGrEP(横浜グリーンエネルギーパートナーシップ事業)

横浜市は現金の補助金ではなく、キャッシュレスポイント等の還元です(郵送申請の場合は商品券)。太陽光は15,000円分/kWで上限4kW、蓄電池は120,000円分/件。受付は2026年6月15日から12月25日までの先着で、予算に達した時点で終了します。蓄電池を申請するには、太陽光を同時に設置するか、すでに設置していることが条件です。

順番の縛りが強い制度です。設置後の申請はできず、参加申請 → 設置 → 完了報告の順で進め、設置前の写真も必要です。県との併用は可能と明記されていますが、着工日がYGrEP申請より後であることが条件になります。県の第2期に申請してから着工する予定なら、YGrEPの申請はその前に済ませておく必要があります。

川崎市:たいせつ補助金(太陽光発電設備等設置費補助金)

川崎市は現金で、金額は市町村では最大級です。FIT(固定価格買取制度。再エネの電気を国が決めた価格で一定期間買い取る仕組み)を使うか使わないかで金額が大きく変わり、FITを使わない=発電した電気を自分の家で使う「自家消費」を前提にした設計ほど手厚くなっています。

設備 区分 補助単価 上限
太陽光 FITなし 7万円/kW(経費の1/2まで) 28万円/件
太陽光 FITあり 4万円(定額) 4万円/件
蓄電池 FITなし太陽光と連系 10万円/kWh(経費の1/2まで) 70万円/件
蓄電池 FITあり/既設太陽光と連系 10万円/kWh(経費の1/2まで) 30万円/件

蓄電池の容量は初期実効容量(カタログの定格容量ではなく、実際に充放電に使える容量)で計算します。定格容量で見積もると金額がずれるので注意が必要です。受付は2026年4月24日から12月28日で、予算の執行率は9月2日時点で36%。太陽光は2kW以上50kW未満が対象で、交付決定通知書を受け取る前に工事を始めると対象外になります。

その他の主要市町の状況

各自治体の公式ページをもとに編集部が整理しました(確認日:2026年8月6日〜9月8日)。状況は日々変わるので、申請前に必ず各市町の公式ページで確認してください。制度がない市町でも、県と国の制度は使えます。

自治体 状況 太陽光 蓄電池
相模原市 第1期受付中(9/1〜9/30)/第2期は2027年2月 一律8万円 一律20万円(太陽光との連系必須)
平塚市 受付中(8/27時点59件) 5万円/kW・上限20万円 同時設置で5万円上乗せ
横須賀市 停止中。9/10に再開予定・20件程度 7万円/kW(非FIT・自家消費30%以上) 導入費の1/3
藤沢市 全枠終了(8/18)
鎌倉市 重点対策枠は停止中/市単費枠は受付中 1万円/kW・上限5万円(FIT型) 上限5万円
逗子市 市単費枠は受付中だが予算の9割超を消化 蓄電池とのセット必須 セットで上限15万円
大和市 受付中(FIT型・自家消費型の2本立て) 1万円/kW(FIT型)/7万円/kW(自家消費型) 上限3万円/経費の1/3
厚木市 受付中 1万円/kW+自家消費加算7万円/kW 5万円+自家消費加算
小田原市 受付中(5/12〜12/18) 7万円/kW(非FIT・自家消費30%以上) 価格の1/3
開成町 受付中(県内最高水準) 最大12万円/kW(4kWまで・非FIT・県補助併用時) 設置費用の1/3
秦野市・海老名市・伊勢原市 受付終了
茅ヶ崎市・大磯町・二宮町・山北町・箱根町・真鶴町・湯河原町・清川村 市町村独自の制度なし

併用できる組み合わせ・できない組み合わせ

県と市町村はおおむね併用できます。ただし川崎市は「設置費用から国・県の補助額を引いた残り」を対象に計算します。単純な足し算にはなりません。

県と市町村の併用は、神奈川県・横浜市・川崎市のいずれも公式に可としています。併用できない例としては、横浜市YGrEPと環境省のストレージパリティ事業(太陽光)の組み合わせがあります。併用の可否は、金額よりも先に確認しておくべき点です。

もうひとつ見落としやすいのが経費控除です。川崎市の手引き(個人住宅編)には「設備の本体購入費や工事費用(消費税額を除いた額)から、国や県の補助金額を控除した額を補助対象経費とします」とあります。県から20万円もらうと、市の計算のもとになる金額がその分減るということです。

図4 経費控除方式のお金の流れ(川崎市の手引きの例:蓄電池の費用200万円)
① 設置費用(税抜)
200万円
② 県の補助20万円を先に差し引く
県 20万円残り 180万円 = 市の補助対象経費
③ 残り180万円に川崎市の補助率1/2をかける
県 20万円市 90万円自己負担 90万円
県の20万円を引かずに計算すると市の補助は100万円。引くと90万円。もらえる合計は県20万円+市90万円=110万円。

この例では、県の20万円を引かなければ市の補助は100万円でした。引いた結果90万円なので、県からもらった20万円のうち10万円分は市の補助が減る形になります。同じ方式は逗子市などにもあり、市の要綱を読まずに単純に足すと、見込みが数万円から十数万円ずれます。

申請の順番と、間に合わなくなりやすい点

交付決定の前に工事を始めると、金額に関係なく全額が対象外になります。先着制なので、書類を揃えてから考えると枠が消えます。

つまずく箇所は3つです。ひとつめは交付決定前の着工で、県も川崎市も明記しています。契約や見積ではなく、工事に着手した日で判定され、県の審査には2〜3か月かかる場合があります。ふたつめは先着と予算到達で、年度の初めに「今年もある」と思っていた制度が夏には消えていることが珍しくありません。

図5 2026年度に「先着」で終わった制度の例
5/12
神奈川県 第1期
受付開始から実質2日で予算到達
5/29
国 DR家庭用蓄電池
締切12/10の予定が5月末で終了
6/9
伊勢原市
受付終了
8/18
藤沢市
全枠終了
8月
海老名市
受付終了
9/7
神奈川県 第2期
受付開始日のうちに予算到達(約500件)
県は第1期・第2期とも、受付開始から1〜2日で終わった。

みっつめは制度ごとの順番の食い違いです。横浜市YGrEPは設置前の申請が必須で、県と併用するなら着工日はYGrEP申請より後でなければなりません。一方で県は交付決定前の着工を認めません。この2つを同時に満たす工程を、最初に組んでおく必要があります。

図6 申請の流れと、つまずきやすい点
1見積・機種決定対象製品リストに型番があるか確認
2市町村の補助に申請横浜YGrEPは設置前の申請が必須
3神奈川県に電子申請先着・予算到達で終了
4交付決定通知を受け取るこれより前に着工すると全額対象外
5着工・設置・系統連系県は審査に2〜3か月かかることも
6完了報告・実績報告期限は制度ごとに異なる
順番は「申請 → 交付決定 → 着工」。工事の日程は交付決定の後に決める。
金額についての注記
※本記事は 2026年9月8日時点 で公開されている制度の内容にもとづきます。制度は年度ごとに改定されます。
※いずれの制度も予算の上限に達した時点で受付が終了する場合があります。記事中で「受付中」としたものが、閲覧時点では終了していることがあります。
※実際の設置費用と補助額は、住宅の条件・選ぶ機器・施工会社によって異なります。記載の金額は制度上の単価や上限であり、受け取れる額を保証するものではありません。

よくある質問

Q. 太陽光だけ、蓄電池だけでも補助は出ますか
神奈川県の制度は同時導入が条件のため、単体では対象外になります。市町村では単体で申請できる制度もあります(鎌倉市の市単費枠、綾瀬市など)。逆に、逗子市の市単費枠のようにセットが必須の制度もあります。
Q. すでに太陽光がある家に蓄電池だけを後付けする場合は
県の制度は使えません。市町村では、川崎市が既設の太陽光と連系する蓄電池を上限30万円の区分で対象にしています。相模原市も既設・新設を問わず、太陽光との連系があれば対象です。
Q. FITを使うのと使わないのでは、どちらが得ですか
金額だけを見れば、FITを使わない設計のほうが補助は厚くなります。川崎市の太陽光はFITなしで7万円/kW、FITありで4万円の定額です。ただしFITなしを選ぶと、余った電気を売る収入は前提にできません。補助の差額と、10年分の売電額を並べて比べる必要があります。

この記事の用語

kW
発電設備の出力の大きさを表す単位。「4kWの太陽光」はこの値。パネル1枚は0.4〜0.5kW程度で、戸建てでは3〜6kWが多い。 用語集で見る
kWh
電気の量を表す単位。蓄電池の容量(何kWhためられるか)や、1か月に使った電力量に使う。1kWの機器を1時間動かすと1kWh。 用語集で見る
初期実効容量
蓄電池が導入時点で実際に充放電に使える容量。カタログの定格容量より小さい。補助金の計算にこの値を使う自治体がある。 用語集で見る
FIT
太陽光などでつくった電気を、国が決めた価格で一定期間(住宅用は10年)電力会社が買い取る仕組み。 用語集で見る
自家消費
発電した電気を売らずに自宅で使うこと。買う電気を減らせるので、売電単価より買電単価が高い今は有利になりやすい。 用語集で見る
交付決定
補助金を出すという行政の正式な決定。通知書の日付が基準になり、これより前に工事を始めると対象外になる制度が多い。 用語集で見る
経費控除
国や県の補助額を設置費用から差し引いてから、市の補助額を計算する方式。単純な足し算にならない。 用語集で見る
SII
国の補助事業の執行を担う一般社団法人。補助対象になる蓄電池の登録製品リストを管理している。 用語集で見る
V2H
電気自動車の電池から家に電気を送る設備(Vehicle to Home)。車を大きな蓄電池として使う考え方。 用語集で見る
DR
電力の需要と供給に合わせて、家庭の蓄電池などの充放電を調整する仕組み。国の蓄電池補助の参加条件になっていた。 用語集で見る
家庭用蓄電池
太陽光でつくった電気や夜間の安い電気をためて、必要なときに使う装置。停電時の備えにもなる。 用語集で見る
定格容量
カタログに書かれた蓄電池の容量。実際に使える量(初期実効容量)はこれより少ない。 用語集で見る

出典